そけいヘルニア
そけいヘルニア

そけいヘルニアとは、太ももの付け根(そけい部)にあるお腹の壁(腹壁)の一部に隙間ができ、本来お腹の中にあるはずの腸や脂肪組織が、その隙間から飛び出してくる状態をいいます。「脱腸」という名前でも広く知られています。
私たちのお腹の中には「腹圧(ふくあつ)」という圧力がかかっており、立ったときや力を入れたときに腹圧が上がると、腹壁の弱い部分から臓器が押し出されやすくなります。そけい部はもともと構造上の隙間が存在する場所であるため、こうした「飛び出し」が起こりやすい部位とされています。
成人のそけいヘルニアは自然には治らず、根本的な治療は手術です。手術の時期は症状や全身状態に応じて判断します。
そけいヘルニアは、飛び出す場所や経路によって3種類に分けられます。
外そけいヘルニア
そけいヘルニアの中でもっとも多くみられるタイプです。精巣(男性の場合)や子宮円索(女性の場合)への血管が通る「そけい管(そけいかん)」という管の入り口から腸が飛び出します。この入り口のことを「腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)」と言います。小児期のそけいヘルニアの多くは、先天的にこの腹膜鞘状突起が閉じていない場合に起こり、この外そけいヘルニアに分類されます。また、成人もそけい部の腹壁が弱くなることで発症します。特に男性は女性に比べてそけい部の構造上の隙間が広いため発症しやすいとされていますが、女性でも珍しくはありません。
内そけいヘルニア
そけい管の内側にある腹壁の筋肉が弱くなった部分から腸が飛び出すタイプです。外そけいヘルニアより内側で発症するため、このように呼ばれます。加齢による筋肉や結合組織の衰えが主な原因で、中高年の男性に多くみられます。重い荷物を扱う仕事や、慢性的に腹圧が上がる状況が続く方に発症しやすいとされています。
大腿ヘルニア
そけい靭帯(そけいじんたい)の下側にある「大腿管(だいたいかん)」と呼ばれる部分から腸が飛び出すタイプです。そけい部よりもやや内側・下側に膨らみが現れることがあります。中年以降の女性に比較的多くみられ、3種類の中でもっとも嵌頓(かんとん:腸が飛び出たまま戻らなくなる状態)を起こしやすいとされています。膨らみが小さく症状も出にくいため、気づきにくいことがある点に注意が必要です。
そけいヘルニアが起こる主な原因は、腹壁の筋肉や組織が弱くなることです。以下のような要因が重なることで発症しやすくなるとされています。
胎児期に形成される「腹膜鞘状突起(ふくまくしょうじょうとっき)」と呼ばれる管は、成長とともに自然に閉じますが、まれに生後も閉じないことがあります。これが外そけいヘルニア発症の一因とされており、乳幼児や若い男性に多い傾向があります。
年齢を重ねるにつれて腹壁の筋肉や結合組織の強度が低下し、隙間が生じやすくなります。特に40代以降に多くみられます。日頃から適度な運動を取り入れ、筋肉の衰えを防ぐことが大切とされています。
腹圧が継続的に高まると腹壁への負担が増え、ヘルニアが起こりやすくなると考えられています。
症状は、飛び出した腸や脂肪の量、状態によって異なります。初期には、痛みがなく膨らみだけが現れることもあります。
飛び出した腸が元に戻らなくなった状態を「嵌頓」といいます。嵌頓が起きると腸への血流が妨げられ、腸閉塞(ちょうへいそく)や腸壊死(ちょうえし)につながる危険性があります。以下のような症状が現れた場合は、ためらわずに速やかに医療機関を受診してください。
嵌頓は緊急手術が必要になる場合もあります。「様子をみよう」と思わず、上記の症状が出た際はすぐにご受診ください。
視診と触診を行い、必要に応じて超音波検査などを追加します。
問診
膨らみが現れる状況(立っているとき、力んだときなど)、いつ頃から気になっているか、痛みや不快感の有無、過去の腹部手術歴などをお聞きします。日常生活での気になることをできるだけ詳しくお話しいただけると、より正確な診断につながります。
視診・触診
立った状態や横になった状態でそけい部の膨らみを確認し、手で触れて状態を確かめます。咳やいきみ(バルサルバ法)を行っていただき、膨らみの出方を確認することもあります。多くの場合、これだけで診断が可能です。
超音波検査(エコー検査)
そけいヘルニアであることを正確に診断するには超音波検査が有効です。体への負担がなく、その場で結果を確認できる検査です。
CT・MRI検査
超音波検査を行ってもはっきりと診断できない場合は、CTやMRI検査を組み合わせることで正確に診断できることがあります。ここでそけいヘルニア以外の疾患(そけい部リンパ節炎、精索水腫、ヌック管水腫、脂肪腫、静脈瘤など)が見つかるケースもあります。当院では近隣の連携施設にてCTやMRI検査を実施しています。
以下に当てはまる方は、そけいヘルニアに注意していただくとよいでしょう。
また、女性の大腿ヘルニアは膨らみが小さく症状も出にくいため、気づきにくいことがあります。そけい部や太ももの付け根に違和感を覚えた場合は、早めに受診されることをおすすめします。
気になる症状がある方は早めにご相談ください。当院では、日帰りの腹腔鏡手術に対応しています。
そけいヘルニアは、太ももの付け根(そけい部)の腹壁に生じた隙間から腸や脂肪が飛び出す疾患です。外そけい・内そけい・大腿ヘルニアの3種類があり、それぞれ発症しやすい年齢や性別に特徴があります。
初期は痛みが少なく膨らみだけを感じる方も多いですが、放置すると嵌頓を引き起こす危険性があります。自然に治ることはないため、症状に気づいたら早めに専門の医師にご相談ください。正確な診断と適切な治療を受けることが、日常生活を早く取り戻すための近道です。
そけいヘルニアは、初期には痛みが少なく、膨らみが出たり引っ込んだりします。しかし、自然に治ることはありません。
経過とともに膨らみや痛みが強くなり、手術が必要になることがあります。まれに嵌頓を起こし、緊急手術が必要になる場合もあります。
そけいヘルニアは、経過とともに膨らみが大きくなることがあります。
初期の段階では立ったときだけ現れていた膨らみが、進行すると横になっても引っ込まなくなることがあります。さらに、それまで感じていなかった痛みや重たさ、引っ張られるような不快感が日常的に現れるようになり、長時間の立ち仕事や軽い運動でも違和感を覚えるようになっていきます。
膨らみが大きくなると、手術が複雑になる場合があります。
そけいヘルニアを放置することで起こりうる、もっとも深刻なリスクが「嵌頓(かんとん)」です。嵌頓とは、腹壁の隙間から飛び出した腸が、その隙間に挟まって元に戻らなくなった状態のことをいいます。
通常の状態であれば、飛び出た腸は手で押せば引っ込みます。ところが嵌頓が起きると、腸が出口でぎゅっと締め付けられた状態になり、腸への血液の流れが妨げられます。血流が途絶えると腸は急速に傷み始め、放置すると腸管壊死(ちょうかんえし:腸が死んでしまう状態)や腸閉塞(ちょうへいそく:腸が詰まって機能しなくなる状態)に進展する危険性があります。最悪の場合、腹膜炎(ふくまくえん)を引き起こし、命に関わる状態になることもあります。
嵌頓は突然起こることがあります。強い痛みとともに膨らみが戻らなくなった場合は、速やかな受診が必要です。
以下の症状が現れた場合は、すぐに入院可能な医療機関を受診してください。このような状態になると、緊急手術が必要になる場合があります。
そけいヘルニアの種類によって、嵌頓の起こしやすさに違いがあるとされています。特に注意が必要なのが、大腿ヘルニア(だいたいヘルニア)です。
大腿ヘルニアは、そけい靭帯の下側にある「大腿管(だいたいかん)」という細い管を通って腸が飛び出すタイプのヘルニアです。この大腿管は非常に狭いため、一度腸が飛び出すとすぐに締め付けられやすく、嵌頓を起こすリスクが高いとされています。大腿ヘルニアは中年以降の女性に多く見られますが、膨らみが小さく気づきにくいという特徴があります。「女性だからそけいヘルニアにはならない」と思い込まず、違和感を感じたら早めに受診することが大切です。
嵌頓のような緊急状態に至らなくても、そけいヘルニアを放置し続けることは日常生活にさまざまな支障をきたします。
初期は膨らみがあるだけで気にならなかった方も、時間が経つにつれて痛みや重さ、引っ張られる感覚が強くなっていくことがあります。長時間の立ち仕事やデスクワーク、少し力を使う動作でも違和感を覚えるようになり、仕事や趣味に集中しにくくなることがあります。
膨らみが大きくなると、重いものを持つことや、激しい動作を避けるようになります。スポーツや趣味の活動が制限され、生活の質が徐々に下がっていきます。「無理をして嵌頓になったら困る」という不安から、自分で活動範囲を狭めてしまう方も少なくありません。
ヘルニアの状態が進行すると、飛び出した腸や脂肪がお腹の中に戻りにくくなることがあります。早い段階で手術を受けた場合と比べて、手術がより複雑になる場合もあるとされています。早めに治療を受けることが、身体への負担を最小限に抑えることにつながります。
「手術はできれば避けたい」「症状がないうちは放置してもいいのでは」と考える方は多いです。確かに、無症状のそけいヘルニアに対しては、経過観察を選択する場合もあります。しかし、経過観察中に嵌頓が突然起こる可能性はゼロではありません。
特に大腿ヘルニアは嵌頓リスクが高いため、診断がついた時点で手術を検討することが推奨されています。また、症状がなくても徐々に悪化していくケースもあり、「無症状だから安心」とは言い切れません。
手術のタイミングについては、患者様それぞれの状態・生活環境・ご要望をふまえて、医師と相談しながら決めることが大切です。「手術が必要かどうかを確かめるためだけの受診」も可能ですので、まずは一度ご相談ください。
以下に当てはまる方は、早めにご受診されることをおすすめします。
経過観察となった場合も、症状の変化に応じて手術の時期を検討します。
当院では、患者様の状態を丁寧に診察したうえで、手術が必要かどうか、手術の時期やご本人の状況に合った治療方針をわかりやすくご説明しています。患者様によっては手術のメリットよりもリスクが上回る可能性があり、その場合は手術をお勧めしないこともございます。「受診したら必ず手術を勧められる」ということはありませんので、どうぞ安心してご相談ください。
そけいヘルニアは「痛みがないから大丈夫」と思いがちですが、放置することで嵌頓という緊急状態を引き起こす危険性があり、日常生活への支障も少しずつ大きくなっていきます。
気になる症状があれば、早めに外科を受診してください。当院では、日帰りの腹腔鏡手術に対応しています。
太ももの付け根に何となく違和感がある、股のあたりに膨らみがある。そういった症状が気になりながらも「受診するほどでもないかな」と迷っている方は多くいらっしゃいます。
そけいヘルニアは初期の段階では痛みが少なく、膨らみが出たり引っ込んだりするだけのことも多いため、「もう少し様子をみよう」と後回しにしてしまいがちです。しかし、セルフチェックで当てはまる項目があれば、一度専門医に診ていただくことをおすすめします。
正確な診断は医師による診察が必要ですので、あくまでも受診の目安としてご活用ください。

セルフチェックを行う前に、そけいヘルニアがどの部位に現れるかを確認しておきましょう。そけいヘルニアの膨らみが現れるのは、主に以下の場所です。
太ももの付け根(そけい部)
下腹部とももの境目あたり。左右どちらか、または両側に現れることがあります
陰嚢(男性の場合)
膨らみが進行すると、陰嚢まで広がることがあります
大腿部の内側
(大腿ヘルニアの場合)
そけい部よりもやや下・内側に現れます。女性に多いタイプです
膨らみは横になっているときには見えにくく、立った状態や力を入れたときに確認しやすくなります。チェックは立った状態で行うことをおすすめします。
そけいヘルニアのセルフチェックリスト
以下の項目を確認してみてください。
「緊急性の高い症状」に当てはまるものがある場合は、すぐに入院可能な医療機関を受診してください。これらは腸が戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」のサインである可能性があり、放置すると危険な状態になることがあります。
そけいヘルニアの可能性があります。膨らみが小さくても、痛みがなくても、症状は少しずつ進行することがあります。早めに外科を受診し、専門医に診ていただくことをおすすめします。
そけいヘルニアの症状が複数重なっている状態です。放置すると状態が悪化する可能性があるため、できるだけ早めの受診をおすすめします。
すぐに入院可能な医療機関を受診してください。夜間・休日であっても、救急外来への受診をためらわないでください。当院は入院治療に対応していないため、緊急性が高いと判断した時点で、適切な医療機関をご紹介いたします。
セルフチェックはあくまでも受診の目安であり、正確な診断には医師による診察が必要です。以下の点に注意してご活用ください。
大腿ヘルニアは膨らみが小さく、セルフチェックで気づきにくいことがあります。特に中年以降の女性で「なんとなくそけい部に違和感がある」という方は、セルフチェックで明確な膨らみがわからなくても、一度専門医に相談されることをおすすめします。大腿ヘルニアは嵌頓を起こしやすい種類であるため、早めの受診が大切とされています。
受診の際、以下の点を医師に伝えると診断がスムーズになります。
また、膨らみが出ているタイミングで受診することが理想的です。診察中に膨らみが引っ込んでしまっている場合は、膨らんでいるときの写真を撮影してお持ちいただくと、診断の参考になります。
以下に当てはまる方は、そけいヘルニアを発症しやすいとされています。自覚症状がない場合でも、定期的に自己確認される習慣をおすすめします。
「セルフチェックに当てはまったけど、受診するほどでもないかな」と感じる方も多いと思います。しかし、そけいヘルニアは自然に治ることはなく、時間が経つにつれて状態が進行することがほとんどです。早めに受診して正確な診断を受けることが、最終的に身体への負担を減らすことにつながります。
当院では、患者様の状態をしっかり診察したうえで、手術が必要かどうか、どのような治療が適しているかを丁寧にご説明しています。「受診したら必ず手術になる」ということはありませんので、まずは気軽にご相談ください。WEB予約は24時間受け付けていますので、ご都合のよいタイミングでお申し込みいただけます。セルフチェックはあくまでも受診を判断するための目安のひとつです。「当てはまる項目がある」「なんとなく気になる」という段階でも、受診のきっかけとして十分です。早めに受診することで、万が一の状態になる前に適切な対処ができます。気になったらまず一歩、専門医への相談から始めてみてください。
セルフチェックリストに当てはまる項目がなくても、実際には医師の診察でそけいヘルニアと診断されるケースがあります。その一方で、チェックリストに複数当てはまっていても、別の疾患であることも少なくありません。
そけい部の膨らみには、リンパ節炎(リンパ節の腫れ)、陰嚢水腫(いんのうすいしゅ:男性の陰嚢に液体が溜まる状態)、精索水腫(せいさくすいしゅ:精索周囲に液体が溜まる状態)、ヌック管水腫(ぬっくかんすいしゅ:女性のそけい部にある円靭帯周囲に腹膜の一部が遺残し液体が溜まる状態)、脂肪腫(しぼうしゅ:脂肪の塊)、静脈瘤(じょうみゃくりゅう:静脈が膨らんだ状態)など、そけいヘルニア以外の原因が隠れていることがあります。これらはセルフチェックだけでは見分けることが難しく、超音波検査(エコー検査)、CT、MRIなどを用いた専門的な診察が必要です。
セルフチェックで判断できない場合もご相談ください。
診察時に膨らみが出ていない場合は、膨らんでいるときの写真が診断の参考になります。
成人のそけいヘルニアは自然には治らず、根本的な治療は手術です。手術では、飛び出した腸や脂肪を戻し、腹壁の弱い部分を補強します。
腸が戻らなくなる「嵌頓(かんとん)」を起こすと、緊急手術が必要になる場合があります。症状や全身状態を確認し、手術の時期を判断します。
治療方針は、症状、全身状態、生活環境、希望を踏まえて決めます。手術の利益よりリスクが上回る場合は、経過観察を提案します。
そけいヘルニアの手術方法には大きく分けて2種類あります。
そけい部切開法は従来から行われている術式で、そけい部を約4〜5cm切開しお腹の外側からヘルニアを治す方法です。これに対し、腹腔鏡手術は約3〜5mmの傷で腹腔鏡という細いカメラを使ってお腹の内側からヘルニアを治す方法です。いずれの方法でも、メッシュという医療用素材を用いてヘルニア部分をふさぐため、再発率が低い治療として確立されています。メッシュを用いずに自己組織だけを用いてヘルニア部分を縫い閉じる自己組織修復法も過去に行われていましたが、こちらは再発率が高いため現在ではほぼ行われていません。ただし、何らかの理由でメッシュが使用できない場合のみ自己組織修復法を用いることがあります。
当院では腹腔鏡手術を中心に、日帰りで治療します。帰宅基準を満たしたことを確認してから、手術当日に帰宅できます。
当院は、腹腔鏡下そけいヘルニア修復術(TAPP法)を得意としています。お腹に約3〜5mmの小さな穴を3か所あけ、そこから細いカメラ(腹腔鏡)と手術器具を挿入して行います。ここでは当院の手術の特徴についてTAPP法を中心に解説します。
腹腔鏡手術は、そけい部切開法と比べて傷が小さく、術後の痛みが比較的少ないとされています。
診察、執刀、術後診察まで院長が担当します。院長は日本消化器外科学会の専門医・指導医、日本内視鏡外科学会の技術認定医です。
腹腔鏡手術システムにはOLYMPUS VISERA ELITE III、高周波手術装置にはエルベVIO 3、手術器具にはAESCULAPの3.5 mm鉗子などを採用しています。手術器具は外科医にとって最も大切な仕事道具であり、一切妥協をせずに選定しました。





手術は全身麻酔で行います。麻酔科医と、麻酔領域の特定行為研修を修了した看護師が連携し、手術中の全身状態を管理します。
手術では、腹壁の隙間を医療用人工シート(メッシュ)で補強します。自分の組織だけで縫い閉じる方法と比べて再発率が低く、現在の標準的な術式として広く用いられています。使用するメッシュは体への適合性が高いポリプロピレンを主成分とした医療用素材を使用しています。そけいヘルニア用メッシュは各メーカーから多くの種類が発売されており、それぞれ特徴が異なります。どのメッシュを使用するかの選定は非常に重要であり、外科医としての知識と経験が求められます。当院ではメッシュの種類も複数取り揃えており、患者様一人一人の状態に合わせて適切なメッシュを選択することでオーダーメイドの治療が可能です。
左右両側にそけいヘルニアがある場合でも、腹腔鏡手術であれば同一の手術で両側を修復することができます。そけい部切開法では左右それぞれに傷が必要になりますが、腹腔鏡では同じ傷から両側にアプローチできるため、患者様の身体的・時間的な負担を減らすことにつながります。
患者様の状態によっては腹腔鏡手術が難しく、そけい部切開法をお勧めすることがあります。そけい部切開法は4〜5 cmの傷で行うため、腹腔鏡手術に比べると痛みや負担が大きくなる傾向があります。しかし、当院では複数の麻酔方法を組み合わせることで痛みをできる限り抑えることで、日帰りで対応しています。
当院での手術はすべて日帰りで行うため、入院ができません。緊急性が高い、重い持病を患っている、長時間の手術が予想されるなどの理由で、日帰り手術が難しいケースがあります。その場合は、入院手術が可能な連携医療機関を紹介させていただきます。
通院は、初診、手術、術後診察の3回が基本です。追加検査や術後の経過によって、通院回数が増える場合があります。
初回診察
WEBまたは電話で予約してください。初診では診察と超音波検査を行い、治療方針を説明します。手術を希望する場合は、心電図、血液検査などの術前検査を行い、手術日を決めます。CT・MRI検査が必要な場合は、通院回数が増えることがあります。
手術当日
(1件目の手術の場合)
9:45 来院・術前準備
食事と水分の制限は事前に案内します。来院後に体調を確認し、着替えと点滴などの準備を行います。
10:00 麻酔・手術(2〜2時間半)
全身麻酔後に手術を開始します。手術は1〜1時間半程度、麻酔を含む手術室の滞在は2〜2時間半程度が目安です
12:30 術後回復(2時間程度)
手術後は2時間ほど院内で休み、飲水、歩行、排尿、痛みや吐き気の状態を確認します。
14:30 帰宅
帰宅基準を満たしたことを医師が確認してから帰宅します。院内滞在は4〜5時間程度が目安です。手術当日はご自身での車の運転はできませんので、公共交通機関のご利用か付き添いの方による送迎をお願いしています。
術後診察
手術後1週間前後で診察を予定します。経過に問題なければここで終了となります。術後の状態によっては診察日が増える場合もございます。
無理をせず、痛みを目安に少しずつ普段の生活へ戻りましょう。
回復の早さには個人差があります。次の時期は一般的な目安です。全身麻酔後24時間は運転・重要な判断を避け、痛みが強い動作はいったん中止してください。

痛み・腫れ
処方された痛み止めを指示どおり使用してください。創部周囲や陰のうの軽い腫れ・内出血はみられることがあります。
傷・入浴
シャワーは翌日から、浴槽での入浴は1〜2週間後が目安です。創部をこすらず、温泉・プールは傷が治るまで控えてください。
食事・排便・飲酒
水分と食物繊維をとり、便秘や強いいきみを避けます。アルコールは術後1〜2週間控えてください。
仕事・運動
デスクワークは翌日〜3日、立ち仕事は3〜5日が目安です。仕事内容と痛みに合わせて調整してください。
次の症状があるときは当院へご連絡ください
※術式、傷の状態、持病などにより指示が異なる場合があります。退院時にお渡しする個別の指示と主治医の説明を優先してください。
術後には、出血や血腫、漿液腫、傷の感染、排尿しにくくなること、そけい部の痛みやしびれなどが起こることがあります。まれにメッシュの感染、腸管・膀胱・血管の損傷、慢性的な痛み、再発がみられることもあります。起こり得る合併症や受診が必要な症状について、詳しくは診察時に説明します。
そけいヘルニアの手術は健康保険が適用されます。高額療養費制度を利用した場合の費用の目安を以下に掲載します。
| 年収の目安 | 自己負担額の目安 |
|---|---|
| 住民税非課税 | 約37,000円 |
| 年収約370万円未満 | 約62,000円 |
| 年収約370万~770万円未満 | 約87,000円 |
| 年収約770万円以上 | 約110,000円 |
1か月(毎月1日から末日まで)に支払う保険診療の自己負担額が、年齢や所得に応じた上限額を超えた場合、超過分が支給される制度です。マイナ保険証をご利用いただくことで、窓口でのお支払いを原則として上限額までに抑えられます。術前検査や処方薬などの費用、保険外診療は対象外となる場合があります。
| 項目 | 入院手術 | 日帰り手術 |
|---|---|---|
| 手術・麻酔などの医療費 | かかる | かかる |
| 入院費 | かかる | かからない |
| 差額ベッド代 | かかる | かからない |
| 入院中の食事代 | かかる | かからない |
| リネン・日用品など | かかる | 当日の手術衣のみ |
| 高額療養費制度 | 利用可能 | 利用可能 |
| 仕事を休む期間 | 長め | 短め |
一般的に、日帰り手術では入院手術に比べて数万円程度、費用を抑えることができます。
そけいヘルニアでは、立ったときやお腹に力を入れたときに、足の付け根が膨らむことがあります。横になったり手で押したりすると膨らみが戻ることもあります。
ただし、リンパ節の腫れや精索・陰嚢の病気など、別の疾患でも似た症状がみられます。診察や超音波検査などで確認しますので、気になる症状がある方はご相談ください。
受診できます。そけいヘルニアは、必ずしも診察時に膨らみが確認できるとは限りません。
立った状態やお腹に力を入れた状態で診察し、必要に応じて超音波検査を行います。症状や検査結果によっては、CT検査が可能な医療機関をご紹介することがあります。
紹介状がなくても受診できます。
他の医療機関で検査や治療を受けている場合は、紹介状や検査結果、お薬手帳をお持ちいただくと、診療をより円滑に進められます。
受診できます。他院で診断を受けた方や、手術を勧められた方のご相談にも対応しています。
検査画像や診療情報提供書をお持ちの場合は、受診時にご持参ください。
成人のそけいヘルニアが、薬や運動によって自然に治ることは基本的にありません。根本的な治療は手術です。
ただし、症状がほとんどない場合には、年齢や持病、生活への影響などを考慮し、経過観察を選択することもあります。
必ずしもすぐに手術が必要とは限りません。一方で、膨らみが大きくなっている、日常生活に支障がある、嵌頓(かんとん)の危険性が高いと判断される場合には、手術をお勧めします。患者様の状態やご希望を踏まえて治療方針を決めます。
時間の経過とともに膨らみが大きくなったり、痛みや違和感が強くなったりすることがあります。
まれに、腸などが挟まって戻らなくなる「嵌頓」を起こすことがあります。強い痛み、吐き気、腹部の張りを伴い、膨らみが戻らない場合には、緊急手術が必要となる可能性があります。
強い痛みがある、膨らみが硬くなって戻らない、吐き気や嘔吐がある場合には、嵌頓の可能性があります。
ご自身で強く押し込もうとせず、速やかに救急医療機関を受診してください。
左右両側にできることがあります。片側の症状で受診された場合でも、診察や手術中に反対側のヘルニアが確認されることがあります。
両側に治療が必要な場合には、同じ手術で両側を修復できることがあります。
女性にもそけいヘルニアは発生します。また、女性では大腿ヘルニアと呼ばれるタイプが含まれていることがあります。
大腿ヘルニアは腸が挟まりやすいとされているため、症状や診察所見に応じて手術を検討します。
手術後に再発する可能性はありますが、現在の手術では再発率を低く抑えるため、人工補強材であるメッシュを使用する方法が一般的です。
過去にそけいヘルニア手術を受けた部位が再び膨らんできた場合も、治療方法を検討できます。
当院では、腹腔鏡を用いた手術を中心に行います。
腹腔鏡手術では、お腹に数か所の小さな傷をつくり、カメラでそけい部を内側から確認しながら、メッシュを用いてヘルニアの出口を補強します。
患者様の状態や過去の手術歴などによっては、そけい部を切開する方法をご提案することがあります。
腹腔鏡手術では、お腹に数か所の小さな傷をつくり、カメラでそけい部を内側から確認しながら手術を行います。
主なメリットは、傷が小さいこと、術後の痛みが比較的少ないこと、身体への負担が少なく早期の社会復帰が期待できることです。また、左右両側のそけい部を観察できるため、両側のヘルニアを同じ手術で治療しやすいという特徴があります。
一方、腹腔鏡手術には次のようなデメリットがあります。
腹腔鏡手術がすべての患者様に最適とは限りません。年齢、持病、過去の手術歴、ヘルニアの状態などを確認し、必要に応じてそけい部切開法も含めて適切な手術方法をご提案します。
多くの場合、ポリプロピレンなどで作られた医療用のメッシュを使用します。
メッシュを用いて弱くなった部分を広く補強することで、再発を防ぎます。メッシュは原則として体内に残ります。
腹腔鏡手術は全身麻酔で行います。手術中は眠っているため、痛みを感じることはありません。
手術前には全身状態や検査結果を確認し、安全に日帰り手術を受けられるかを判断します。
片側のそけいヘルニアでは、手術時間はおおむね1時間程度が目安です。
両側のヘルニア、再発ヘルニア、腹部手術後の癒着がある場合などは、手術時間が長くなることがあります。麻酔の導入や覚醒、術後の観察を含めると、院内で数時間お過ごしいただきます。
安全に手術を行うため、血液検査、心電図検査、胸部レントゲン検査、呼吸機能検査などを行います。
年齢や持病、検査結果によっては、追加の検査や専門医の診察が必要となる場合があります。
過去に腹部手術を受けた方でも、腹腔鏡手術が可能なことがあります。
ただし、下腹部や骨盤内の手術歴がある場合には、癒着のため手術の難易度が高くなることがあります。手術歴や傷の位置を確認したうえで、適切な手術方法を判断します。
再発したそけいヘルニアについても診察しています。
前回の手術方法やメッシュの位置、再発の状態によって、適した手術方法が異なります。過去の手術記録がある場合はご持参ください。
年齢だけで日帰り手術の可否を決めることはありません。
心臓や肺の機能、持病、日常生活の状態、ご家族の支援体制などを総合的に評価します。日帰り手術が安全ではないと判断した場合には、入院設備のある医療機関をご紹介します。
持病があっても、病状が安定していれば手術が可能な場合があります。
病状や服用している薬によっては、かかりつけ医への確認や治療の調整が必要です。安全上、入院での手術が望ましいと判断した場合には、連携医療機関をご紹介します。
服用している薬の種類や、薬を必要とする病気によって対応が異なります。
ご自身の判断で薬を中止すると、脳梗塞や心筋梗塞などの危険が生じることがあります。必ずお薬手帳をご持参いただき、医師の指示に従ってください。
術後の痛みや吐き気がコントロールされ、飲水、歩行、排尿などに問題がないことを確認したうえで、当日にご帰宅いただきます。
回復が十分でない場合や、予期せぬ合併症が生じた場合には、連携医療機関への受診や入院が必要になることがあります。
全身麻酔後は、判断力や運動機能が十分に回復していない可能性があります。そのため、原則として成人の付き添いの方と一緒にご帰宅いただきます。
手術当日は、自動車、バイク、自転車の運転はできません。公共交通機関またはタクシーをご利用ください。
日帰り手術では、帰宅後に異常があった場合、速やかに医療機関を受診できることが重要です。
居住地、移動時間、付き添いの有無、持病などを確認し、日帰り手術が可能か個別に判断します。遠方の方には、手術当日に近隣で宿泊していただく場合があります。
ご来院後、体調確認や着替え、点滴などの準備を行います。
手術後はリカバリールームでお休みいただき、飲水、歩行、排尿、痛みや吐き気の状態を確認します。帰宅基準を満たしたことを確認してからご帰宅となります。
日帰り手術では、手術の内容だけでなく、年齢、持病、生活環境、帰宅後の支援体制などを確認し、日帰りで安全に治療できる方を選定することが重要です。
日帰り手術が適さないと判断した場合には、無理に当院で手術を行わず、入院設備のある医療機関をご紹介します。
痛みの感じ方には個人差がありますが、多くの場合、内服の鎮痛薬で対応できます。
手術当日から数日間は、傷の痛みやそけい部のつっぱり感、違和感を感じることがあります。通常は時間とともに軽くなります。
手術後にそけい部や陰嚢が腫れたり、皮下出血によって紫色になったりすることがあります。
多くは時間とともに改善しますが、急速に腫れが大きくなる場合や、強い痛み、発熱を伴う場合にはご連絡ください。
傷は小さく、原則として抜糸を必要としない方法で閉じます。毎日の消毒も通常は必要ありません。
傷の管理方法や入浴の時期については、手術後に個別にご説明します。
シャワーは、傷の状態に問題がなければ手術翌日頃から可能です。
湯船につかる入浴については、傷の状態を確認しながら開始時期をご案内します。
デスクワークなど身体への負担が少ない仕事であれば、数日以内に復帰できる方が多くいます。
立ち仕事、重量物を扱う仕事、腹部に強く力がかかる仕事では、より長い休養が必要になることがあります。仕事内容に応じて個別にご説明します。
散歩などの軽い運動は、体調をみながら早期から始められます。
筋力トレーニング、ランニング、ゴルフ、重い物を持つ運動などは、痛みや違和感が落ち着いてから段階的に再開してください。
手術後に吐き気がなければ、消化のよいものから食事を再開できます。
特別な食事制限は通常ありませんが、手術当日の飲酒はお控えください。
手術当日は運転できません。
翌日以降も、痛みがある場合や鎮痛薬の影響がある場合には、急ブレーキなどの操作が遅れる可能性があります。身体を問題なく動かせることを確認してから再開してください。
次のような症状がある場合は、当院へご連絡いただくか、緊急性が高い場合は救急医療機関を受診してください。
そけいヘルニア手術は健康保険が適用されます。3割負担の場合、収入によって異なりますが37,000円〜110,000円程度です。自己負担額は、手術方法、保険の負担割合、年齢、所得区分、使用する医療材料などによって異なります。高額療養費制度を利用できる場合がありますので、詳しい金額は診察時にご案内します。
保険診療の自己負担額が一定額を超えた場合、高額療養費制度の対象となることがあります。
マイナ保険証を利用することで、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられる場合があります。加入している健康保険や所得区分によって限度額が異なります。
加入している保険契約の内容によっては、手術給付金の対象となる場合があります。
給付の可否や必要書類については、事前に保険会社へお問い合わせください。診断書の作成には所定の文書料がかかります。
診察でそけいヘルニアと診断され、日帰り手術が可能と判断できた場合には、初診当日に手術日を相談することができます。
持病の確認や追加検査、他院への診療情報の照会が必要な場合には、検査結果を確認した後に手術日を決定します。
ご家族と一緒に説明を受けていただけます。
手術内容や麻酔、術後の注意点について説明しますので、特に手術当日に付き添う予定の方には、可能な範囲で一緒に説明を聞いていただくことをお勧めします。
初診では、手術の必要性と治療の選択肢を説明します。
その場で手術を決める必要はありません。WEBから24時間、初診予約を受け付けています。
参考文献

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