虫垂炎
虫垂炎

「以前に盲腸と診断されて抗生剤で治療したが、また同じような痛みが出てきた」「抗生剤で一度は治ったけれど、再発が心配」。こうした悩みを抱えている方は少なくありません。
虫垂炎(ちゅうすいえん)は、大腸の始まりの部分(盲腸)にある細い管状の突起「虫垂(ちゅうすい)」に炎症が起きる疾患です。一般的に「盲腸」という名前で知られていますが、正確には盲腸に付属する虫垂に炎症が起きた状態を指します。右下腹部の痛みや発熱、吐き気などが主な症状で、急性腹症(きゅうせいふくしょう:急激な腹部の痛みを伴う緊急性の高い状態)のひとつに数えられます。
虫垂炎の治療には、抗生剤による保存的治療と手術による治療があります。近年では、比較的軽症の虫垂炎に対して抗生剤で治療するケースが増えていますが、抗生剤で治療した場合は一定の割合で再発することが知られています。当院では、抗生剤で治療された後の再発予防を目的とした待機的腹腔鏡手術に対応しています。
虫垂炎の症状は、炎症の程度や進行段階によって異なります。典型的な経過としては、はじめにみぞおちや臍(へそ)周辺に鈍い痛みが現れ、数時間かけて右下腹部に痛みが移動していくとされています。
虫垂炎を放置すると虫垂が破裂し(穿孔:せんこう)、腹膜炎(ふくまくえん)を引き起こすことがあります。この場合は腹部全体に激しい痛みが広がり、高熱・悪寒・全身状態の悪化など重篤な症状が現れます。穿孔を起こした場合は緊急手術が必要になります。急性期の強い腹痛・高熱が現れた場合は、すぐに入院可能な医療機関の救急外来を受診してください。
虫垂炎の診断には、症状の確認と各種検査を組み合わせて行います。
問診・身体診察
右下腹部の圧痛(押すと痛む)や反跳痛(手を離したときに痛む)の確認、発熱や吐き気などの症状の経過を確認します。
血液検査
白血球数の増加や炎症反応(CRP)の上昇など、炎症の程度を確認します。発作時の採血結果が手元にある場合は、診察時にお持ちください。
超音波検査(エコー検査)
体への負担がなく、虫垂の腫れや周囲の炎症の状態を確認できます。腸管内のガスが多い場合は確認しにくいことがあります。
CT検査
虫垂炎の診断において、もっとも精度の高い検査です。虫垂の腫れや炎症の範囲、穿孔の有無などを詳しく確認できます。当院で待機的虫垂切除術を行う場合は、発作時のCT画像をお持ちいただくと診断がスムーズです。また、手術前に現在の虫垂の状態を確認するため、近隣の医療機関でCTを撮影していただきます。
虫垂炎の治療方法は、炎症の程度や状態によって、抗生剤による保存的治療と手術による治療に大きく分けられます。
比較的軽症の虫垂炎(穿孔や膿瘍形成がない場合)に対しては、抗生剤による治療が選択されることがあります。入院のうえで点滴による抗生剤投与を行い、炎症を鎮める方法です。手術を避けられるメリットがある一方で、一定の割合で再発することが知られており、再発した場合には手術が必要になることがあります。
虫垂を切除する手術(虫垂切除術:ちゅうすいせつじょじゅつ)が根本的な治療です。腹腔鏡を用いた低侵襲な手術が広く行われており、虫垂を切除することで再発はなくなります。穿孔や腹膜炎を起こしている場合は緊急手術が必要です。
抗生剤で虫垂炎を治療した場合、炎症はいったん落ち着きますが、虫垂自体は体内に残ったままです。そのため、再び虫垂炎を起こす(再発する)可能性があります。
再発率については、抗生剤治療後1年以内に約30%の方が再発するとの報告があります。再発した場合の多くは手術が必要となり、再発を繰り返すと炎症が周囲に波及して癒着(ゆちゃく:組織同士がくっついた状態)が生じ、手術がより難しくなる場合があります。
こうした再発リスクを踏まえ、抗生剤治療後に「再発する前に手術で根本的に治しておきたい」と考える方に対して、炎症が落ち着いた段階で行う計画的な手術を待機的手術(たいきてきしゅじゅつ)といいます。待機的手術は急性期の手術と比べて炎症が落ち着いた状態で行うため、より安全に手術を行いやすいとされています。
「また再発するのではないかと不安」「繰り返す腹痛に悩んでいる」という方は、待機的手術を検討されることをおすすめします。なお、当院での虫垂炎の対応は、炎症が落ち着いた後の待機的手術です。急性期の強い腹痛・発熱が現れている場合は、当院の日帰り手術の対象ではありませんので、救急外来を受診してください。「以前に虫垂炎と診断されて治療したが、再発が心配なので根本的に治しておきたい」という方や、長期の海外渡航、受験、重要な仕事、スポーツ大会などを控えていて突然の再発が心配な方が対象となります。受診のタイミングについてご不明な点があれば、お電話またはWEB予約フォームからお気軽にお問い合わせください。
当院では、抗生剤で治療された虫垂炎の再発予防を目的とした待機的腹腔鏡下虫垂切除術を日帰りで行っています。急性期の緊急手術には対応しておりませんが、炎症が落ち着いた段階での計画的な手術に対応しています。

腹腔鏡手術は傷が小さく、術後の痛みが比較的少ないとされています。
手術は全身麻酔で行います。麻酔科医と、麻酔領域の特定行為研修を修了した看護師が連携し、手術中の全身状態を管理します。
診察、執刀、術後診察まで院長が担当します。院長は日本消化器外科学会の専門医・指導医、日本内視鏡外科学会の技術認定医です。
初回診察
WEBまたは電話で予約してください。初診では診察と超音波検査を行い、治療方針を説明します。手術を希望する場合は、心電図、血液検査などの術前検査を行い、手術日を決めます。CT・MRI検査が必要な場合は、通院回数が増えることがあります。
手術当日
(1件目の手術の場合)
9:45 来院・術前準備
食事と水分の制限は事前に案内します。来院後に体調を確認し、着替えと点滴などの準備を行います。
10:00 麻酔・手術(2時間程度)
全身麻酔後に手術を開始します。手術は1時間程度、麻酔を含む手術室の滞在は2時間程度が目安です。
12:00 術後回復(2時間程度)
手術後は2時間ほど院内で休み、飲水、歩行、排尿、痛みや吐き気の状態を確認します。
14:00 帰宅
帰宅基準を満たしたことを医師が確認してから帰宅します。院内滞在は4〜5時間程度が目安です。手術当日はご自身での車の運転はできませんので、公共交通機関のご利用か付き添いの方による送迎をお願いしています。
術後診察
手術後1週間前後で診察を予定します。経過に問題なければここで終了となります。術後の状態によっては診察日が増える場合もございます。
無理をせず、痛みを目安に少しずつ普段の生活へ戻りましょう。
回復の早さには個人差があります。次の時期は一般的な目安です。全身麻酔後24時間は運転・重要な判断を避け、痛みが強い動作はいったん中止してください。

痛み・腫れ
処方された痛み止めを指示どおり使用してください。創部周囲や陰のうの軽い腫れ・内出血はみられることがあります。
傷・入浴
シャワーは翌日から、浴槽での入浴は1〜2週間後が目安です。創部をこすらず、温泉・プールは傷が治るまで控えてください。
食事・排便・飲酒
水分と食物繊維をとり、便秘や強いいきみを避けます。アルコールは術後1〜2週間控えてください。
仕事・運動
デスクワークは翌日〜3日、立ち仕事は3〜5日が目安です。仕事内容と痛みに合わせて調整してください。
次の症状があるときは当院へご連絡ください
※術式、傷の状態、持病などにより指示が異なる場合があります。退院時にお渡しする個別の指示と主治医の説明を優先してください。
術後には、出血、傷の感染、腹腔内膿瘍、腸の動きが一時的に低下する腸閉塞などが起こることがあります。まれに虫垂を切除した部分からの漏れや、癒着による腸閉塞が生じることもあります。起こり得る合併症や受診が必要な症状について、詳しくは診察時に説明します。
虫垂炎の手術は健康保険が適用されます。高額療養費制度を利用した場合の費用の目安を以下に掲載します。
| 目安年収 | 自己負担額の目安 |
|---|---|
| 住民税非課税 | 約37,000円 |
| 約370万円未満 | 約62,000円 |
| 約370万~770万円未満 | 約85,000円 |
| 約770万円以上 | 約90,000円 |
1か月(毎月1日から末日まで)に支払う保険診療の自己負担額が、年齢や所得に応じた上限額を超えた場合、超過分が支給される制度です。マイナ保険証をご利用いただくことで、窓口でのお支払いを原則として上限額までに抑えられます。術前検査や処方薬などの費用、保険外診療は対象外となる場合があります。
| 項目 | 入院手術 | 日帰り手術 |
|---|---|---|
| 手術・麻酔などの医療費 | かかる | かかる |
| 入院費 | かかる | かからない |
| 差額ベッド代 | かかる | かからない |
| 入院中の食事代 | かかる | かからない |
| リネン・日用品など | かかる | 当日の手術衣のみ |
| 高額療養費制度 | 利用可能 | 利用可能 |
| 仕事を休む期間 | 長め | 短め |
多くの場合、入院手術は日帰り手術より数万円程度の追加費用がかかるため、日帰り手術のほうが経済的とされています。
「以前に盲腸と診断されて抗生剤で治療したが、また同じような右下腹部の痛みが出てきた」「再発が心配で根本的に治療しておきたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
当院では患者様の状態を丁寧に診察したうえで、待機的手術が適しているかどうかをわかりやすくご説明しています。「手術が必要かどうかだけ確認したい」という段階でもお気軽にご受診ください。WEB予約は24時間受け付けています。
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