2026年10月18日

Getting Things Done. ― 気がかりを手放し、日常に彩りを。
「いつかやらなければ」と思いながら、ずっと先延ばしにしていることはないだろうか。
壊れかけた家電の修理、気になっている歯の治療、なかなか手をつけられない部屋の片づけ。
今すぐに困るわけではない。けれど、ふとした瞬間に思い出し、少しだけ気持ちが重くなる。
こうした小さな気がかりは、私たちが思っている以上に、日々の暮らしに影響を与えているのかもしれない。
Getting Things Doneという考え方
アメリカのデビッド・アレン氏が提唱した「Getting Things Done(GTD)」という仕事術がある。
GTDとは、頭の中にある「やるべきこと」や「気になっていること」を一度外に取り出し、整理して、次に取るべき行動を明確にすることで、ストレスを減らし、生産性を高めようという考え方である。
大切なのは、単に多くの仕事をこなすことではない。
頭の中を占領している未解決の問題から解放され、本当に大切なことに集中できる状態をつくることである。
私は、この考え方は仕事だけでなく、健康や日常生活にも通じるものがあると思っている。
日常から少しずつ活気を奪う病気
当院で診療している鼠径ヘルニア(脱腸)、臍ヘルニア(でべそ)、痔などの病気は、必ずしも診断されたその日に手術を必要とするわけではない。
症状が軽ければ、経過観察という選択肢もある。
しかし、こうした病気には、少しずつ生活の質を下げてしまう側面がある。
例えば、鼠径部の膨らみが気になって、好きだったランニングやゴルフを控えるようになる。
排便時の痛みや出血が気になって、毎日のトイレが憂鬱になる。
以前に虫垂炎を起こし、保存的治療で改善したものの、再発が心配で海外旅行の計画をためらってしまう。
どれも、今すぐに生活が成り立たなくなるほどの問題ではないかもしれない。
しかし、こうした小さな不安や制約が積み重なることで、日々の暮らしから少しずつ自由や活気が失われていく。
病気そのものの症状だけでなく、「病気のことを気にしながら生活する」という心理的な負担も、決して小さなものではないのである。
手術は、人生を前に進めるための手段
私は外科医として、手術の成功とは何かを考えることがある。
もちろん、病気を安全かつ確実に治療することが第一である。
しかし、それだけで十分だろうか。
鼠径ヘルニアの手術を受けた患者さんが、再び気兼ねなくスポーツを楽しめるようになる。
痔の治療を受けた患者さんが、排便への不安を感じずに朝を迎えられるようになる。
長く抱えていた病気への不安から解放され、以前から計画していた旅行に出かけられるようになる。
そうした変化にこそ、手術の本当の価値があるのではないかと思う。
手術は、それ自体が人生の目的ではない。
病気によって制限されていた日常を取り戻し、人生をもう一歩前に進めるための手段なのである。
日帰り手術で、治療へのハードルを下げる
とはいえ、手術を受けるという決断は、決して簡単なものではない。
手術への恐怖、入院による仕事への影響、家族への負担、術後の生活への不安。
さまざまな理由から、治療を先延ばしにしている方も少なくないだろう。
だからこそ、当院では、できる限り身体への負担が少なく、普段の生活への影響を抑えた日帰り手術に取り組んでいる。
適切な治療法を選択し、安心して手術を受けられる環境を整え、できるだけ早く日常生活に戻れるようにする。
もちろん、すべての病気に手術が必要なわけではなく、すべての方が日帰り手術に適しているわけでもない。治療の必要性や時期は、病状や患者さんの希望に応じて慎重に判断する必要がある。
それでも、手術へのハードルを少しでも下げることで、これまで治療をためらっていた方が、一歩を踏み出しやすくなると考えている。
日常に、もう一度彩りを。
Getting Things Done.
頭の中にずっと引っかかっていたことを整理し、解決に向けて行動する。
それによって生まれた心の余裕は、仕事の効率を高めるだけでなく、日常生活そのものを豊かにしてくれるかもしれない。
ずっと気になっていた病気についても、同じことが言えるのではないだろうか。
もちろん、急いで手術を受けることだけが正解ではない。まずは診察を受け、自分の病気を理解し、納得のいく治療方針を決めることも、大切な一歩である。
病気への不安がなくなったら、何をしたいだろう。
旅行に出かける。山に登る。スポーツを楽しむ。あるいは、何も気にせず、いつもどおりの一日を過ごす。
そんな当たり前の日常こそ、かけがえのないものだと思う。
病気を治すだけでなく、その先にある人生を少しでも豊かにする。
それが、私たちの目指す「日常を止めない日帰り手術」である。
本日も読んでいただきありがとうございました。
町田そけいヘルニア日帰り手術クリニック
安藤文彦