2026年9月20日

詐欺と日帰り手術
当院で初めて手術を受けてくださった患者さんが、先日、術後1週間の診察に来られた。
開院して最初の手術ということもあり、私自身、いつも以上に緊張しながら臨んだ手術であった。幸い手術は問題なく終了し、その日のうちに無事ご自宅へ帰られた。
そして1週間後。
診察室に入ってきた患者さんが、開口一番こう言った。
「先生、とても大変だったのよ」
一瞬、ドキッとした。
(え? 術後に何かトラブルがあったのか?翌日の電話では元気そうだったが・・・)
痛みが強かったのか。気分が悪くなったのか。傷に何か起きたのか。
頭の中でいろいろな可能性を考えながら詳しく話を聞いてみると、患者さんは続けた。
「家に帰ったら、主人が詐欺に巻き込まれていて。もう手術どころじゃなかったわよ」
なんと・・・。
幸い、ご主人が途中で「これはおかしい」と気づき、金銭的な被害は免れたとのこと。
事情を聞いて、まずはほっとした。
患者さん自身の術後経過には特に問題はなく、手術についても「とても満足しています」と言ってくださった。
ただ、
「でも本当に、手術より詐欺のほうが大変だったのよ」
とのことであった。
警察に連絡したり、資金を安全な場所へ移したり、その後の対応にかなり骨が折れたそうである。
後学のためにどんな詐欺だったのかを何度か聞いたのだが「普通の詐欺よ、普通のね!」としか答えてくれなかった。一体どんな手口だったのか気になるが、まあ、それはいいとして・・・
どうやらこの患者さんの中では、「手術を受けた日」の記憶が、すっかり「詐欺にあった日」の記憶に上書きされてしまったようだ。
手術の日を狙うとは、まったくけしからん話である。
ただ、その話を聞きながら、私は密かに少しうれしくも感じていた。
もちろん、詐欺に遭うこと自体は喜ばしいことではないし「日常」とは到底いえない。
それでも、手術を受けたその日に自宅へ帰り、ご主人の異変に気づき、警察に連絡し、お金を守るために動くことができた。
つまり少なくとも、手術そのものによって生活が止まってしまうことはなかった、ということである。
当院が目指しているのは、「日常を止めない日帰り手術」である。
手術が人生の一大イベントとして強く記憶に残るのではなく、気がつけば別の出来事に上書きされている。
少し極端な例ではあるが、それくらいでちょうどいいのかもしれない。
初めての手術を終えた患者さんから、思いがけない形で「日帰り手術らしさ」を教えていただいた出来事であった。
さて、伝えたいメッセージは何かというと、みなさん詐欺には気をつけましょう、ということです。
本日も読んでくださりありがとうございました。
町田そけいヘルニア日帰り手術クリニック
院長 安藤文彦